8月23、24日の二日間、大田区議会の健康福祉委員会のメンバーで、愛知県豊田市と静岡県浜松市を訪問しました。
豊田市では、私自身、区議会でその実施を求めてきた「重層的支援体制整備事業」についてお話を伺いました。
豊田市では、平成29年から先進的に国のモデル事業を進めてきた背景から、重層的支援体制整備事業ではなく、重層的支援体制「推進」事業(以降、推進事業)と呼んでいます。豊田市では推進事業の実施に伴い庁内全体で「この相談内容はうちじゃない」という対応が厳禁となり、主たる支援対象者以外からの相談であっても、しっかりと受け止め適切に支援機関へとつなぐ包括的相談支援事業を実施しています。そのために、それぞれの窓口において適切に支援機関につなぐため、自身の属する分野以外の支援についても広く学ぶ機会を作っています。
また、豊田市独自の取り組みを推進事業に組み込んでおり、重層的支援会議定例会がその一つです。この定例会では、重層的支援会議とは違い個別の事例を検討するのではなく、事例自体を積み上げそれを分析し、具体的な施策の実現を目指しています。推進事業はあくまでも、今ある制度の組み合わせであり、制度の狭間にある方々への支援を行うためにはそれに合わせた制度創設も必要との説明が印象的でした。
もう一つの独自の施策として「とよた多世代参加支援プロジェクト」を実施しており、公共サービスでは対応しきれないニーズに対応するサービスを創出・提供する為、福祉分野だけでなく、農家や生花店、飲食店など50を超える事業所が連携し、個別支援のための居場所や生活改善の場を創出し、提供しています。
大田区では現在、重層的支援体制整備事業については移行準備事業を実施し、来年度には本格実施する予定です。こうした中において重要なのは、今回の豊田市の事例のように、国の制度設計にとらわれない重層的支援の仕組みづくりです。なければ制度を作る、行政だけでは十分対応できなければ民間の力をお借りする、まさに柔軟性をもった支援体制づくりが必要です。豊田市の事例を、今後の大田区の重層的支援体制整備事業に生かしていきます。
浜松市では、「災害時医療について」にお話を伺いました。
浜松市では、マグニチュード9クラスが想定される南海トラフ巨大地震のリスクに対応する為、平成8年とかなり早い時期から地域防災計画のうち医療救護活動に係る事項の個別計画である「浜松市医療救護計画」を策定しています。大田区では、こうした医療救護活動における指針として、大田区災害時医療救護活動ガイドラインを策定していますが、あくまでもこのガイドラインは発災から72時間以内の活動について定めているものです。浜松市医療救護計画では、急性期のみではなく、亜急性期から中長期まで長いスパンでの医療的な支援について定めており、住民の生活を長期的に支えていく視点において、急性期以降の対応について大田区でも事前に想定しておくことが必要です。
災害時の医療において最も重要な考え方は、保健医療調整における職員が必ずしも全員参集できる訳ではないということです。浜松市では各担当者が自身の任務や行動を明確にするだけでなく、ActionCardを作成し、これを読めば全ての職員が行動できるようにしています。また情報伝達における正確性を確保する上でも、LINEWORKSや広域災害救急医療情報システム等、出来る限り記録が残る伝達方法を優先し活用しています。LINEWORKSについては、行政内部だけでなく災害医療コーディネーターや市内医療機関等、その役割ごとにグルーピングし、迅速な情報共有のツールとして活用しています。
これ以外にも、医療的ケア児・者への災害時支援や災害時の感染対策体制等、浜松市の災害時医療体制における取組について、大田区としても積極的に取り入れていくべきであり、議会で提案していきます。